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Breeze Assistantを覚醒させよ!CRMデータ×Web検索【カスタムアシスタント活用①】

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HubSpotは、その強力なCRM機能を核として、ビジネスのあらゆる活動を支援するプラットフォームへと進化を続けています。そして今、その進化を加速させているのが、生成AI機能群「Breeze AI」です。日々の定型業務の自動化から、顧客とのコミュニケーションの質の向上まで、その可能性は計り知れません。

しかし、多くのBreeze AI機能は、その用途が特定のシーンに限定されがちです。例えば、ワークフロー内で利用できるBreezeアクションはCRM内のプロパティデータを主軸とし、Agentシリーズは便利な一方でユーザー自身によるカスタマイズの余地が少ないのが現状です。

もし、CRMに蓄積された顧客との生々しい対話ログと、インターネット上の膨大な最新情報をシームレスに融合させ、自社の営業担当者一人ひとりに最適化された「賢い助手」を創り出せるとしたらどうでしょうか?

本記事では、それを実現するゲームチェンジャー、「Breeze Assistant」のカスタムアシスタント機能に焦点を当てます。初回商談で得られた貴重なインサイトと、リアルタイムのWeb情報を組み合わせ、競合の一歩先を行く提案資料の骨子を瞬時に作成する―そんな未来の営業スタイルを、具体的な実装方法とともに解説します。


なぜ「Breeze Assistant」がゲームチェンジャーなのか?

提案資料の作成プロセスを思い出してみてください。営業担当者は、まずHubSpotの取引レコードを開き、過去のやり取りや商談のメモ、ミーティングの要約を読み返します。次にブラウザを開き、顧客の業界動向、競合他社の最新ニュース、関連技術のトレンドなどを検索します。そして、これらの分断された情報を頭の中で統合し、PowerPointやGoogleスライドに向かって、ようやく骨子の作成を始めるのです。このプロセスには、膨大な時間と労力がかかります。

Breeze Assistantのカスタム機能は、この根本的な課題を解決します。この機能の最大の特徴は、「HubSpot CRM内のデータ」「外部のWeb情報」という、これまで交わることのなかった2つの情報源をインプットとして利用できる点にあります。

これにより、以下のようなことが可能になります。

  • コンテキストの深化: 商談ログから顧客の具体的な課題や発言のニュアンスを汲み取り、それをWeb情報から得られる市場全体のトレンドと結びつけて分析する。

  • 提案の差別化: 顧客が名前を挙げた競合他社の最新のプレスリリースや製品情報を即座に参照し、自社提案の優位性を明確にするための切り口を見つけ出す。

  • 作業の圧倒的な効率化: 従来数時間を要していた情報収集と整理、骨子作成のプロセスを、わずか数分に短縮する。

まさに、営業担当者一人ひとりに、24時間365日働く優秀なアシスタントが付くようなものです。それでは、この強力なアシスタントを「育成」する方法を見ていきましょう。


実践:商談ログとWeb情報から提案骨子を錬成する

ここでは、初回商談完了後、取引レコードに自動格納された商談データを基に、Breeze Assistantを使って次回の提案資料の骨子を作成する具体的な手順を解説します。

前提:商談データの自動格納

このプロセスの出発点は、質の高いインプットデータです。HubSpotのミーティング機能を活用し、オンライン商談を実施すれば、商談の録画、AIによる文字起こし、そして要約が、自動的に関連する取引レコードのタイムラインに記録されます。この「一次情報」が、カスタムアシスタントの思考の源泉となります。

実装ステップ

1. Breezeスタジオにアクセスする

HubSpotポータルのナビゲーションバーから、Breeze AIのアイコンをクリックし、「Breezeスタジオ」にアクセスします。

2. アシスタントタブへ移動

Breezeスタジオ内には複数のタブがあります。「アシスタント」タブを選択してください。ここには、既存のアシスタントや、新しく作成するためのインターフェースが表示されます。

3. 「アシスタントを作成」をクリック

画面右上の「アシスタントを作成」ボタンをクリックし、新しいカスタムアシスタントの作成を開始します。

4. アシスタントの設定:魂を吹き込むプロンプト設計

ここが最も重要なステップです。アシスタントの性能は、ここで設定するプロンプト(指示文)の質によって決まります。アシスタントにどのような役割を担わせ、どのような情報源を使い、何を、どのような形式でアウトプットしてほしいのかを、具体的かつ明確に定義します。

  • アシスタント名: 提案骨子作成アシスタント

  • 説明: 取引レコード内の商談ログとWeb情報を基に、顧客向けの提案資料の骨子を作成します。

  • プロンプトの記述

  • アシスタントがアクセスできる内容:
    ここで「ウェブ参照」のチェックボックスを必ずオンにします。これが、アシスタントにインターネット検索を許可し、外部情報を取り込ませるための鍵となります。

5. 設定が完了したらテスト

設定を保存したら、実際にアシスタントを呼び出してテストします。

6. 完成

アシスタントが、プロンプトで指示した通りのフォーマットで、CRMデータとWeb情報を統合した提案骨子を生成すれば完成です。初回で完璧な結果が得られなくても、Breezeスタジオに戻りプロンプトを微調整することで、アシスタントはどんどん賢く、あなたの意図を汲み取れるようになります。

広がる活用法:提案資料作成だけではない可能性

今回ご紹介したカスタムアシスタントの真価は、その汎用性の高さにあります。プロンプト次第で、アシスタントは様々な役割をこなす思考のパートナーとなり得ます。

  • 市場・競合調査: 「[業界名]」の最新市場レポートと、主要プレイヤー3社の動向をWebから調査し、自社が参入する上での機会と脅威をSWOT分析の形式でまとめて。

  • 商談の深掘り分析: この商談ログ全体を読み込み、顧客が発した言葉の中で、最もポジティブな反応とネガティブな反応をそれぞれ3つずつ抜き出し、その背景にある心理を推察して。

  • パーソナライズされたメール文案作成: この取引担当者の役職と、企業の最新ニュースをWebで調べ、次のアポイントメントを打診するための、相手の関心を引くパーソナライズされたメールの下書きを作成して。

Breeze Assistantは、単なる作業の自動化ツールではありません。CRMに眠る顧客の「声」と、Web上に広がる無限の「情報」を結びつけ、営業担当者に新たな「洞察」を与える触媒です。この強力な助手を育て、使いこなすことが、これからのHubSpot活用の新たな標準となるでしょう。